「悪いな。面倒事に巻き込んで」


「いや。別に良いけどよ」


そう言いながら周助がもたれていた壁から離れ、マンションのエントランスに足を向ける。



隣に並んで歩きはじめた俺に、


「…………」


周助は何も言わずにチラリと目線だけでこちらを窺ってくる。



何か言いたそうなのに言いにくい……そんな顔してるな。



「……何だよ」


「何っつーか……」



言いやすいように促してもまだ言い淀む周助がわざとらしく視線を外した。



それから少しだけ間を置いて、


「機嫌悪くね?」


「はっ?」


「て言うより……元気無い」



真っ直ぐな視線に問われて思わず足を止めてしまった。