「……俺にそんな価値無いよ」


「……えっ」



一瞬。

抱きしめられていた耳元を掠めた声は消えてしまいそうにか細くて。



思わず見上げた宝珠の顔は、



「ドライヤー取って来るから待ってて」



こう言って何事も無いようにいつも通りに笑っていた。



……気のせい、なのかな。



ソファーで見せた苦しそうな顔が不意に頭を過ぎった。



辛いなら分けて欲しい。


わたしはもう絶対に、掴んだ宝珠の手を離したりしないから。