顔を軽くしかめた宝珠が短く息を吐き、わたしをもう一度見下ろした。
その瞳はやっぱり冷たくて。
喉の奥で堪えてる嗚咽が、今にも出てしまいそうだ……。
「仮に俺とアンタが幼なじみだったとしても、俺は全く覚えてない」
「えっ……」
「だから。馴れ馴れしく宝珠なんて呼ぶな」
何の躊躇いもなく言い切った声が、胸の奥の深いとこまで突き刺さった。
まるで。
胸の奥の深いとこで温め続けた想いが、全部全部打ち砕かれてしまったみたい……。
固まって何も言えなくなったわたしを一瞥し、宝珠は隣を通り過ぎていく。
窓際の自分の席からまだ新しいカバンを手に取り、
「…………」
無言で教室から出て行ってしまった。
取り残されたのは呆然と立ち尽くすわたしと、
じんわり確実に増していく胸の痛みだけだった。