春、恋咲く。〜旅立ちの日〜

あたしのそんな態度に気づきもせず、アイツは恥ずかしそうにちょっと俯いて髪を掻き上げている。


何を言おうとしてるのか、と勘ぐってみるけれどあたしにはわからなくて。


でも、思えばアイツはいつだって


「あのさ、みなみがさ…」


みなみのことしか考えてない。


アイツがあたしにする話はいつも、バスケの話かみなみの話。


そうやってアイツが話し相手に選ぶのは、いつもあたしだ。


確かに、アイツの好きなものをあたしも大好きだった。


だから話しやすかったのかもしれないけど


ほんの少しでも、考えなかったんだろうか?


あたしの気持ちが向いていること。


ほんの少しも考えなかったんだろうか?


あたしがアンタを好きだってこと。