春、恋咲く。〜旅立ちの日〜

未練の塊を置き去りに、立ち上がり、倉庫の扉に手をかける。


あんなにも長く感じた片思いが、終わる。


これでお別れだ。


この体育館とも


彼との思い出とも…


ずっと、今日を最後にしようと、覚悟してきた。


ずっと前から、ゴールを決めていた。


…でも、それなのに、


やっぱりあたしは、往生際が悪い。


ここに全てを置いて、後は立ち去るだけでいい。


それなのに、あたしの足はぴくりとも動こうとしない。


ずっとそこに張りついたまま、離れない。


…何でかな?


アイツとあたしには、何もなかったのに。


アイツとあたしの間には、みなみとバスケ以外、何もなかったのに。


未練を抱くほどの関係なんて、なかったのに。


どうして、足が動かないんだろう?