春、恋咲く。〜旅立ちの日〜



――愛理っ!


名前を呼ばれてハッとした。


視線をあげればボールがすぐそこまで迫っていて、あたしは慌てて手を出した。


スポッと手のひらに収まったそれを確認した瞬間


フッと気持ちが切り替わって、一気にゴールまで突っ走る。


モヤモヤとした気持ちを振り払うように、一直線に…


そのまま歩幅を合わせてレイアップシュート…


スッと力が抜けて気が楽になる。


バスケをやってると、必死になれる。


余計なことを考えずにいられる。


この片思いに、いい思い出なんてほとんどなかったけど


バスケに出会えたことは唯一、幸せなことだったかもしれない。