「はぁー、笑ってたらなんかもうこんな時間だね。まる、今日はありがとうでした。」


とろとろと歩きながら駅に向かうと、時計台の針は六時半を過ぎていた。

とたんに私の気持ちはずしりと、また鉛の塊に支配される。

家にかえらなきゃ。

帰った所でまた二人の喧嘩する声を聞くだけなのに。



かえりたくないな。


そんな気持ちを悟られまいと、出来るかぎりのテンションであこに向き直る。

「こちらこそありがとう。あこのおかげで退屈しない放課後になったよ。」

また明日ね、と手を降って駅の右手側へ歩き始めた私を、あこが呼び止める。


「うちら絶望してるもの同士、仲良くしよーよ。」

へらっと笑ったあこが言う。
なんてネガティブな理由だろう。でも、悪くない理由。

「うん。チーム組もうか。」
あこの真似みたいに私もへらっと笑い、手を振り替えした。


帰り道すがら私はあこの『絶望してる理由』を聞き忘れたなぁと思いながら、不思議な気持ちのまま歩き続けた。

しばらくして家にたどり着き、つめたいドアノブを回す。