女が自分のワゴンに乗ると、髪をひとつにまとめた。
後から話して分かったことだが、どうやらそれはクセらしい。

彼女が髪を結うと、なんだか、言葉では言い表わせない感情が芽生えた。気がした。



―――ピロロロロ...♪


ん?
携帯か...。

さあ今から走るぞ!という時にかかってきた電話。

ったく、タイミング悪いなぁ。


「もしもし?」
『あ、向平?母さんだけど』

...母か。
まあ母さんならしょーがない。

アルバムが見つかったのかもしれねーし。

そんな期待を背負ってもう一度携帯を耳に当てる。

『卒業アルバム!どこを見ても見つからないのよー。あんた、本当に知らない?』

...見つかってねーのかよ。