─俺が本格的に水江さんを意識し始めたのは、合宿の3日目───


みんな合宿に慣れ、カップルも続々と生まれる中、俺は特に好きな人もおらず、ただただ合宿プランに従っていた。


「は~い、じゃあ今から昼飯のカレーを、行動班ごとで作るんだぞ~?」

合宿といえばカレー!
各班ごとに材料・鍋・薪火セットをもらい、定間隔で並んだ屋外キッチンでカレーを作る。

「水はすぐ近くからの川から汲むこと。じゃ、各自解散!」



この時はまだ、ただカレーを作る、それしか頭になかった。


中学で万年学級委員と生徒会をやっていた俺から見て、このクラスはかなり優秀で真面目なクラスだと思う。

問題児と言われるやつはいないし、いじめなんかは全く無い、はっきり言って楽なクラスだ。


だから何も気にせず自分のことができていた。




「じゃあちょっと水汲んでくるな~!」

いってらっしゃ~い、と野菜切りに没頭していた班員から、流し声。


ポリタンクを2つ担いで、川へと向かう。