ただ、リョウは、気付いていなかったが、傍目には、リョウが思っているほど、おかしくは映っていなかった。



まだ、中学3年とはいえ、リョウは、かなりの高身長で、さらにスタイルもいい。



顔は、男にしては珍しく、中学3年生にして、完成されているといってもいい顔をしている。



それも、かなり出来のいい顔がだ。



いわゆる様になっているのだ。



しかし、心は、まだ幼い、年相応であり、やはり、両手にケーキと花束という格好に恥ずかしさしか覚えなかった。



(・・・チッ、アヤの奴、早く来いよな。)



まだ、約束の時間の1時間30分も前ということを忘れて、心の中でアヤに文句を言うリョウ。



その瞳に見慣れた後姿が、映ったのは、それから20分後の2時50分のことだった。



(あれは・・・マサヤ?)



待つのに飽きて、駅の構内を行き交う人々の観察をしていたリョウの瞳に、マサヤらしき人物の後姿が映った。



マサヤらしき人物は、どこか人目を気にするように、周りから目立たないようにしながら、早足で歩いていた。



(・・・何してんだ、アイツは?)



リョウは、マサヤに声を掛けるべきかどうか迷った。



その人物がマサヤであるということは、普段見慣れているリョウには、かなり自信があった。



ただ、声を掛けるのをためらったのは、アヤとの待ち合わせの途中であったことと、マサヤの纏う雰囲気が、リョウの知っているマサヤとは、明らかに違っていたことだった。



まるで、マサヤの周りだけ、夜になったような、暗い雰囲気が、傍目でわかるのだ。



一言で言えば、異様。



関われば、自分も何かとんでもないことに巻き込まれてしまうような、そんな異様さをリョウは、感じ取っていた。