離れるって実感がまだまだ湧かない。
こうしてると、ずっとそばにいてくれる気がして。
「もしかしたら、廉さんと最後の旅行かもしれないですもんね。そう思うとちょっと寂しいです」
廉さんへの気持ちが強くなる程、本音も出てしまう。
「離れる事だけを考えるとな。でも二度と会えない訳じゃないだろ?」
「え?」
「会いたくなれば会えばいい。携帯貸せ」
携帯を渡すと、2つの携帯を触りだした。
「店を辞めれば忙しくなる事は間違いない。でもいつでもかけてこい」
アタシの手に戻ってきた携帯の中には、廉さんの番号とアドレスが入ってた。
言い方はぶっきらぼうだけど、そこには廉さんらしい優しさも入ってたような気がした。
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