私が生まれたのは7月9日。
本当は7日のほうが良かった。
それは毎年この日が来ると思うこと。

「鈴音!!学校に遅れるよ!!」

 下の階から父の呼び声が響く。
 私の家族はのんびり屋の父と愛犬のサラだけ。
発明家である父は男手ひとつで私のことを育ててくれた。
 母は7年前に乳癌でこの世を去った。
母はとても綺麗な人だった。
私は彼女が怒ったところを見たことがないし、私があの容姿の母から産まれてきたのは嘘だと思うくらい美人だった。
 父はのんびりしててマイペースな人で、顔はどちらかと言うと整っているんだろうが、いつもふにゃっとしているのでわからない。

「じゃあ、行ってくるね!」

「ちょっとストップ!」

靴を履いていると父に呼び止められる。

「なに?」

「今日、楽しみにしとけよ。帰ってきたらびっくりするから」

 ニコニコと、まるで悪戯を仕掛けてそれに引っ掛かるのを待つ子どもの様な顔をした。
今日は7月9日。私の誕生日だから、何かすごいプレゼントを用意したのだろう。

「楽しみにしとくよ。行ってきます!」

「行ってらっしゃい!」