「っぶねー…」



ふぅ、と耳元で吐かれる溜め息。

いつまで経っても衝撃が襲ってこず、そっと目を開ける。



「ごめんね、大丈夫?」

「あ、…」



見上げる形で、目が合う。


近くに感じる体温と吐息。

腰と背中に回された腕。


私は、男性に抱き締められる形で支えられていた。


それに気付くと、顔が熱くなった。

絡まったままの視線を外して、顔を背ける。

無意識に身を引いた。



恥ずかし、かった。



抱き締められていることだけじゃなく、交ざった視線にどきっとしてしまったことも。



「あ、わりっ」

「いえ…」



身体が離され、その体温が遠ざかる。



「ごめんな?」

「大丈夫、です…っ」



眉をハの字にたらし首を傾げて男性は言う。

それに答えてうつむきながらも、顔が更に熱くなるのを感じた。


―っなに考えてんの、私

―まだ触れていたかった、とか…



「―てかさ、」



脳内で自己嫌悪に陥る私に、男性が言葉を続ける。



「"ウメ"、さん…だよな?」



彼の言葉に、私はこくりと小さく頷いてみせる。


"ウメ"は、私のインターネット上での名前だった。

……そう



「あぁ、だよな」



そう言って

ふわりとひまわりのように華やかに笑う彼が





「ジョウ」であるように。





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