gloom of the prince〜恋する研究室〜

「俺にとって、お前はただの後輩じゃないから。」


沢村若菜の目をまっすぐ見つめながら言う。

俺も……素直になろう。


「もう泣くなよ。」


なかなか涙が止まらない彼女を俺は抱きしめる。

女の子の泣き顔は嫌いだ。

できれば笑顔にしたい。

そして、彼女の耳元に唇を寄せて呟いた。


「俺も気づいたんだ。……沢村若菜が好きだってことに。」

「……えっ!」


不意打ち、その3。

俺は彼女に寄せた体を押し返された。

驚いた顔で俺を見つめる沢村若菜は、いつもの彼女だった。


「今、何て言いました?」


聞こえてるだろ?

あんなに近くでささやいたんだから。


「もう、言わねぇよ。俺、優しくないから。」


眉間にしわを寄せて考え込む姿がかわいかった。


「あのさぁ、俺、そんなに難しいこと言ってないけど?」

「うーん……じゃあ、さっきの言葉は、本当ですか?」


珍しく、いい質問するな。


「うん、ホント。」


俺が差し出した右手に沢村若菜の左手が重なる。

その小さな手を俺はギュッと握った。

もうこの手は離さないから、不機嫌になるなよ。


「このまま、どっか行っちゃう?」

「……えっ!」

「ウソだよ。」