gloom of the prince〜恋する研究室〜

思わず俺は笑ってしまった。

先輩は俺だけ、か。

俺にとってはお前はもうただの後輩じゃない、けどな?


「なぁ、もうそろそろ素直にならねぇか?」


俺は下唇を噛んで涙を必死に堪える沢村若菜に微笑みかけた。

そのとき、沢村若菜の目から涙がこぼれた。


「先輩……。」

「何?」

「好きです……、大好きです!」


やっと聞けた、その言葉。

ちゃんと、お前が俺に向けて言った言葉。


「うん、気づいてた。」

「……えっ?いつから……気づいてました?」


お前、俺が気づいてないとでも思ってたのか?

沢村若菜の驚いた顔を見たら、いじわるな俺が顔を出した。


「うーん……。この前、お前が俺の家に来たとき、かな。」


沢村若菜の頬が一瞬で赤く染まる。

やっぱり、面白いな、お前。


「って言うのはウソで。最初に気づいたのは、お前がレポート出しにきたとき。」

「そんな、時から……?」


そりゃ、そうだ。

俺が腕を掴んだだけで顔は真っ赤になるし、ちょっと顔を近づけたら目をそらすし。


「だってさ、お前、好きって何?とか言うから。」


ちょっと、からかってやろうって思っただけなのに。


「……忘れねぇからな。忘れろって言われたって、忘れねぇから。」


俺の方が、忘れられなくなった。