gloom of the prince〜恋する研究室〜

冷たい空気は人を無口にさせる。

それは、俺たちも例外ではなかった。

俺はマフラーに顔を埋め、凍える手をコートのポケットに突っ込んだ。

心なしか、歩調も速くなる。

動いていたら、少しは寒さが和らいだ。

ふと隣を見ると、沢村若菜が俺から遅れはじめている。

どうした?

今まで、どんなことしたって俺について来てたのに。

ついに、沢村若菜は足を止めた。


「どうかした?」


俺は沢村若菜に近づきながら訊く。


「……何でもないです。」


俺と目も合わせようとしない沢村若菜。


「何でもないことはないよね?もしかして、久しぶりに不機嫌とか?」


不機嫌ガール、復活か?


「不機嫌じゃないです。」

「じゃあ、何だよ?」


いつものようにからかってみるが、俺を見ようともしない。

目線は足元に落としたまま。

今日は……何か違う。