あの日以来、南さんは俺に話しかけなくなった。

むやみに付きまとうこともない。

俺としてはありがたいが、たまに感じる視線が痛い。

それなら、話しかけてくれた方がマシだ。

何となく南さんに悪くて、沢村若菜にも話しかけられなくなった。

俺が話しかけなければ、沢村若菜から話しかけてくることはない。

俺に気を使っているのかどうかは知らないが。


「ねぇ、誰か買い出しに行ってよ?」

「あ、俺行く。」


南さんが言った言葉に、俺はすぐに反応した。

この研究室の中に南さんと一緒にいるのは正直息苦しかった。

だけど、南さんから返ってきた言葉は予想もしていなかったものだった。


「じゃあ、私も行きます、ね?」


いいでしょ?とでも言うように俺を見つめる南さん。

でも、俺としては全然よくない。


「いいよ、沢村連れて行くから。南さんは、こっちの準備しといて。」


できるだけ自然に言ったが、南さんは泣きそうな目で見ている。


「おーい、沢村。行くぞ?」


俺は南さんの視線から逃げるように研究室から出た。