南さんが泣いている。

俺が、泣かせたのか……。

でも、仕方ないだろう。


「じゃあ、沢村さんはどうなんですか?」


ポツリと呟き、南さんは俺を見つめる。


「どうって?沢村は、後輩だろ。」

「それは、私に対する優しさですか?」


まっすぐに見つめる南さんの目が怖いと思った。

俺だって、自分の気持ちとちゃんと向き合ってない。

俺は南さんから目をそらしてしまった。


「そんな優しさ、いらない。」


俺の目を見つめたまま、南さんはキッパリ言った。


「私は川崎さんのこと、何も知らなかったみたいですね。私の知ってる川崎さんは、ホントの川崎さんじゃなかったんですね。」


そりゃ、そうだよ。

ホントの自分を出してる人間なんて、そうそういない。

俺は、研究室じゃ『優しい川崎さん』を演じてるだけだ。


「ホントの俺なんて、見せられないよ。」


『優しい川崎さん』が言った。