沢村若菜の視線を感じながら、俺はまた眠ってしまったみたいだ。

夢を見ていた。

温かくて、優しくて、柔らかい夢。

ふわふわしてて、何なのかよく覚えていないけど、俺はそういうものに包まれていた。


「……先輩。」


沢村若菜に呼ばれた気がして、俺は目を覚ました。


「先輩、私、帰りますね。」


……帰るのか。

ありがとう、と言おうと思ったそのとき、沢村若菜の声が聞こえた。


「それから……、大好き。」


知ってたよ、ずっと前から。

俺も今日、気づいたことがあるんだ。

俺は沢村若菜が好き、なのかもしれない。

いや、ホントはずっと前から好きだった、のかもしれない。

俺も、お前も、お互い素直にならないとな。

いつか、この気持ちは伝えられるだろうか?

俺は重い体を起こすと、玄関に鍵をかけに行った。

のぞき窓から沢村若菜の後姿を探したが、もう彼女の姿はなかった。