「沢村?」


俺が寝るのを見ると、荷物をまとめ始めた彼女を思わず俺は呼びとめた。


「何ですか?」

「……帰るの?」


じっと、沢村若菜を見つめる。

よく見ると、かわいい顔をしてる……かもしれない。

熱は、人間の理性まで壊すのか?


「そのうち、帰ります。」


その答えを聞いて、俺は腹をくくった。

多分、この一言を言ったら戻れないけど、もういい。

俺も、いい加減、素直になろう。


「もうちょっと……、いてくれねぇかな。」


俺の精一杯の声は、思ったよりも小さくて、彼女に届いたか心配だった。


「いいですよ、私でいいなら。」


聞こえてた、よかった。

沢村若菜の一言が俺を安心させた。


「でも、カノジョさんに怒られちゃうかも。」


ん?そんなの気にしてたのか?


「いないよ、カノジョなんて。」