「あの、えっと、じゃあ……、薬、買ってきます。」


珍しくまともなことを言って、沢村若菜は俺の手を優しく外した。


「絶対、帰ってきますから。」

「ホント……、」


悪いな、その一言が続かなかった。


「はい。だから、暖かくして寝ててください。」


俺が頷くと、沢村若菜は俺の家を出ていった。

廊下を走る足音が聞こえる。

強い風が窓ガラスを揺らした。

寒いだろうな、外。

申し訳ないと思いながらも、体のダルさには勝てなかった。

ベッドに倒れこみ、布団にもぐりこむ。

そのまますぐに、眠ってしまったみたいだった。


「……先輩?」


誰かに呼ばれた気がした。

いや、誰かはわかってる。

俺を先輩って呼ぶヤツは1人しかいない。

感情に振り回されて、素直じゃなくて、不器用だけど……、憎めないアイツ。