外は恐ろしく寒い。

北風が肌を突き刺す。


「寒っ。」


俺はマフラーに顔を埋めた。

俺の荷物はなぜか沢村若菜が持ってる。

女の子に荷物持たせるなんて、ダメな男だな。


「先輩、大丈夫ですか?」

「ん?」

「フラフラしてます。」

「うん。」


しかも、後輩に心配されてるし。

いつもはすぐの道のりが、ものすごく長いものに感じた。

やっと家に着いて、なんとか鍵をあける。


俺が家の中に入ると、沢村若菜は俺の荷物を置き帰ろうとした。


「暖かくして寝てくださいね。私は帰ります。」


そう言って振り返った後ろ姿を見ると、とてつもなく寂しくなった。

思わず俺は彼女の腕を掴んでいた。


「帰んないで。」

「えっ……、でも。」

「お願い。」


お願いだ。

傍にいてくれるだけでいいから。