gloom of the prince〜恋する研究室〜

しばらくすると沢村若菜が波多江とともにやって来た。

南さんがさっき言っていた通りの席に2人を座らせる。


「川崎さん、私、女の子がうちの研究室に入ってきてくれて嬉しいです。」


よくもまぁ、そんなことが言えるなぁ。

全然、思ってないくせに。


「そ。それはよかった。」

「何か、冷たいですよ?川崎さん。」

「そうか?いつも通りだけど。」


いつも通り俺は沢村若菜の観察がしたいんだよ!

お前がいるからできねぇだろう。

俺は、目の前に置かれたビールを一気に飲み干した。


「本当に、強いんですね。」

「まあね。」


そう言う南さんも、もうグラスが空っぽだけど?

……ん?

沢村若菜のグラスはビールがほとんど残っている。


「何?ビール嫌いなの?俺が飲むよ。」

「いいんですか?」

「いいよ、全然。」


俺は、グラスを受け取ろうと手を伸ばしたが、


「川崎さん、それはマズいですよ。沢村さんだって、一応、女の子なわけだし。私が飲みますよ。」


南さんに奪われた。

いやいや、南さんが飲んだって、何も面白くないだろ。

俺が飲んだ時の沢村若菜の反応が見たいのに。