「ドキドキした?」


俺は手も顔も離してるのに、若菜の顔は相変わらず真っ赤だった。

これじゃあ、俺のことが好きって言ってるようなもんだ。

でも、このくらいは言ってもいいよな。


「顔、真っ赤。」

「へっ……。」


必死で頬を隠そうとするが、俺はもうしっかり見てしまった。


「俺がレポート預かっておこうか?」


若菜の焦りようがかわいそうで、つい言ってしまった。


「期限、昨日までだったんだろ?大丈夫、俺がなんとかしとくから。」

「いいんですか?」

「任せろ!」


残念ながら、悪知恵は働くもんでね。

俺が先生に渡し忘れたことにすれば、先生も受け取ってくれるだろう。


「もう帰っていいよ。」

「……はい。」


おーい!人の顔見たまま、何ポーッとしてんだ?


「あの、じゃあ、お願いします。」


そう言うと、若菜は逃げるように研究室から出ていった。

俺はレポートの表紙を見る。

沢村若菜、か。