野球少年と彼女と私

私は声の主の方を見た。
――‥まさ君。

まさ君がニヤニヤしながら私に近付く。
ゆっくりした足どりで。

まさ君‥なんて事言うの‥
てか、ヤらせろって‥まさ君が勝手にしてきたんじゃん。
断りもなく。
今更、ヤらせろもなにも―――‥

そして、私の腕を掴む。
それと同時にあの時の事を思い出す。
無理矢理‥痛いくらい腕を掴まれたあの時。
怖かったあの時の事。

私は恐怖に駆られた。
まさ君は今日も目が怖かった。


「やっ‥やめて‥やだ‥」

‥‥やだ。
‥‥やめて。


こんなにも、助けを求めてるのに、誰も気付いてくれない。
私が涙を沢山流しているのに、誰も気付いてくれない。
哲平は何してんのよ。
助けてよ‥‥。

「泣いたって無駄。またヤりたいでしょ?だから、ヤらせてあげる」

まさ君はきっと、この世で1番怖い。
ニヤニヤした笑みが、そう思わせる。

「お願い‥お願いします‥やめ‥っヒッ‥ク‥て‥」


―――逃げられないこの状況が私を狂わせる。