忘れないよ










「怒ってなんか・・・」








「いーや、怒ってる」








好きじゃないならキスなんかしないで。








ただ、それだけ。








あたしは歩き出した。








「梓紗!」








ガシッ








腕を掴まれた。








「はぁ・・・はぁ・・・」








「竜、アンタ何走ってんの!?」








「だって・・・、走らねぇと、梓紗・・・っ」








「走っちゃ駄目ってあれだけ言ったのに・・・!」








竜は、病気で、激しい運動を禁止されている。








もちろん、走るのも駄目。








なのになんで・・・走るかなぁ・・・っ








「くそ・・・っ、・・・病気なんか・・・」








「竜!
もういいから、少し休も」








近くの公園まで歩いて、ベンチに座った。








「梓紗、先行けよ。
遅刻するだろ・・・だから、早く」








「バカだね、アンタも
置いて行けるわけないでしょ」








竜の病気のことは、








学校はもちろん、友達にも、仕事でほとんど海外にいる両親にも、言ってない。