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松田さんに手を引かれ、着いたところはショップの前。

ここから探すつもりみたい。


「昨日はどこを歩きました? バッグをなくしたことに気づいたのはいつでしょう?」

「えーっと・・・・」


生まれて初めて誰かと手をつなげたこと・・・・というか、愛しの松田さんと手をつなげた感動もどこへやら。

わたしは返答に困ってしまった。


だって・・・・ね。

わたしは今日だけ人間にしてもらったドールだから。

探すバッグなんて最初からない。


「覚えて・・・・ませんか?」


わたしはコクリと頷く。


「参ったなぁ。そうですか・・・・」

「ごめんなさい。ここまで来て」

「いえ。じゃあ、思い出すまで適当に探しましょう。時間はたっぷりありますから」

「・・・・はい」


本当にごめんなさい。昨日からわたし、絶対にどうかしてる・・・・。

どうしてあのとき、もういいですって言わなかったんだろう。

松田さんと一緒にいたいばっかりに、最初につくべき嘘をつかないでしまった。