女性は、黒いローブに黒い羽マントを潮風に靡かせ、黒い髪を掻き分けた。
{ねぇ、聞いてる?}
『聞いてるよ。』
木の太枝に座っている月鴉は女性の方を見ず、日没の海を眺めている。
{月鴉・・・・動物に恋する人間って、どうだと思う?}
月鴉は、予想外の言葉を口にした女性を見た。
『はぁ!?動物に恋しる人間!?僕に聞かれたってな・・・・
大体、レティシア、動物と・・・?』
女性、レティシアは、月鴉にとって、1番頼れる存在だ。月鴉(Moon Crow)は、小さい頃から独りだった。そんな中、手を差し延べてくれたのがレティシアだ。そして、ただの鴉を、Moon Crow、月鴉にしてくれたのもレティシアだ。レティシアは鴉の右目下の所に、【月印】をいれ、Moon Crowが憧れた人間、月鴉を作った。

夜は、月鴉で木の上で寝る。子供の頃で小さい為、木で眠れるのだ。鴉じゃなくて人間の姿で。

レティシア{貴方は、誰ですか?}
レティシアは、露出しまくりの少女に声をかけた。少女の瞳はじぃ、っとこちらを見ている。
「毒手のプリンセス恋紅よ。今、殺し足りなくてその辺を歩いてて、偶然見つけたから来ちゃったぁ。゛毒の爪″」
恋紅の爪が伸びるとそのままレティシアに向かった。
『双刀・小鴉!』
両手に短剣を持ち、レティシアをかばう。
『毒のプリンだかプリンスだか、知らないし、知りたくもないけど、無意味に殺めようとするのは、いけないんじゃない?』
小鴉でバツを描くように爪を切り裂いた。
恋紅「あ・・・あたしの爪がぁぁぁ!よくもッ・・・・」
『やめておけ。今のお前に何が出来る?見た所、武器は爪。手の次に足の爪を使う気だとしても、結果は同じ。だよ。』
恋紅「っ・・・・ー
気に入ったよ!!覚えておきな!あたしは毒のプリンセスの恋紅!」

悲劇は次の日だった。

月鴉の目に映るのは、火の海と化したレティシアが住んでいた家だった。
『レティシア・・・・!?』
誰かが焼いたのか、自分で焼いたのかは、知らない。今はただ、哀しむしかなかった。
『レティシア・・・・!レティシア・・・!レティシ・・・ア、レティシ、ア・・・・・!レティシアァァァァ!!!!』

最後の一声が嫌に虚しく響いた。