『日も沈んで月が出た・・・!』
月鴉独り、屋根にのり、月を見ていた。
『Moon Crow・・・・―!』
月鴉の姿は光りに包まれ、鳥・・・―《鴉》の姿へとなり、漆黒を思わせる翼と、羽毛。右の紅い瞳の下には【月印】が黄色く刻まれていた。
『にしても、‘陽天’つったって・・・・』
高く飛び上がるり町を見下ろした。
Moon Crowは目がいい。月光でも充分みえる。
『あれは・・・・―!?』
森に独り、玉斗が何を考えているかは知らないが、走っていた。
『アイツ・・・・―!』
羽音をたてずに玉斗の方へ向かった。

森は、霧が思ったより濃かった。玉斗を見失なわない程度に距離をおいて後を追う。
この先には、大きな泉がある。その泉の中央には、太い根が剥き出しで、蒼白い光りを放つ大木がある。
『その木に、関係があるのか?』
玉斗より先回りする。
時間がせめぎあっている。

『なっ・・・・!?』
目にした光景は、朱い光りを放つ大木だった。
『蒼白いはずだ。
玉露を追っている時に見たのは、朱くはなかった・・・・何々だよ。』
呼応するように朱く点滅している。
玉斗「先客がいたか。キミは・・・・Moon Crowだね。昼間に見たのは、もうひとつの姿、月鴉。
見た所、Moon Crowと月鴉には、命も、自我もひとつずつ持ってるみたいだね。どちらかが死んでも、まだ片方は生きている・・・・」
玉斗が来ると大木はさらに朱く光り始めた。
玉斗「八咫が兎斗に反応したか・・・・これで僕は壮大な力を手にする・・・・!」
『やっぱり玉露、兎斗に憑かれてたんだな。』
玉斗「名前を間違っては困るなぁ・・・・・

邪魔だ。消えろッ」
表情が一変し、呪紋を称えてきた。
『生憎、邪魔で消えてほしいのは、玉露の方。覚えが悪くてね。名前なんて、覚えてなくて。』
踏ん反り返ったポーズをとった。軽いノリ。
玉斗「゛卯月″」
『゛黒翼″』
光りの閃光とカッターのように鋭い羽根がぶつかり合う。両者互角の戦いだ。
『小鴉、返してもらってないから、冥界送りにしてあげようか?』
玉斗「そんな口を聞けるのは、今のうちだよ。゛呪詛″」
『゛呪詛″で呪紋を封じたってな・・・・―』