「それで、そのあとどうしたの」
 椅子の背もたれに肘をつき、芹香が呆れ顔で尋ねてくる。疲れはてた顔はそのままに、あたしは卵焼きを頬張った。
「通話口に向かって『くたばれ極小下半身!』って叫んでやった」
「ブフフッ」
 彼女が口に含んでいたミネラルウォーターがペットボトルのなかに逆流するのを、恨めしげに睨んだ。昨日の残り物の唐揚げを箸の先でつつく。
 午前の授業を終えクラスメートたちが楽しげに弁当を広げるなか、あたしだけが負の感情の絶頂にいた。
 昨夜散々泣いたせいで瞼は熱く火照っている。こんな顔じゃ学校に行けない、と母親に訴えたが軽くあしらわれて終わった。
「彼氏から連絡は?」
「『ごめん。本当に反省してる、もう二度とこんなことしないから』」
「マナミの返答は?」
「『ばっかじゃないの』」
「そりゃそうだわ」
 深い溜め息と共に芹香は肩を落とした。