16歳の誕生日。10ヶ月とちょっと付き合った陽くんからの着信を受けると、聞こえてきたのは知らない女の喘ぎ声だった。
 ケーキを買って待ってるから遊びに来いよ。そう言って頬にキスをする彼の笑顔が記憶に新しい。
 入念に化粧をし、髪をセットして、迷いに迷ってようやく着ていく服を決めたというのに、結局予定より1時間も早く出発準備ができてしまった。朝から心臓が高鳴って、起床するはずだった時刻の2時間前に目が覚めたのも要因のひとつだ。
 ケーキならふたりで選びに行けばいい。
 会いたい気持ちが押さえきれず、バタバタと家を飛び出した矢先の出来事だった。
 彼の携帯電話はスライド式である。鞄やポケットのなかでなにかしらにぶつかって、着信履歴が残っている相手に知らず知らずのうちに電話をかけてしまっていることがよくあった。
 だからいつも言ってたじゃない、陽くん。ちゃんとキーロックをしておかなきゃ駄目だよって。