電光石火×一騎当千

「あー気持ち悪! まったく、お前が連れ込む女たちは男に体をこねくり回されて何が楽しいんだか」

「んー? 何ならこの場で俺が教えてやろうか」


先程女の嬌声を耳にしたばかりだ。

男たちに乱され、立ち回りで着崩れた着衣からは、薄暗い森のなかでも鮮やかに目を惹く艶めかしい肌が所々覗いている。

彼が見慣れた戦闘用の彼女の出で立ちとは違い、囮用に変装した女物の着物姿はただでさえ何とも色っぽい。

その様と、ちらりと目に映った女の白いうなじとに男の性を刺激され、黒コートの若者は女の華奢な肩に手を伸ばした。


「口直しに、どうだ?」

「死ね。ヒトの話を聞いていなかったのかお前は。私が体を許すのは私が認めた男だけだ」

普通の女なら容易く理性をとろけさせる彼の微笑にも、
彼女は眉一つ動かさず、愛想ゼロ、絶対零度の視線で言い放った。

男の態度に余程慣れているのか、元々こういう性格なのか……。


「つれないな。俺のことは認めてくれてるんだろう?」

その気になっている男が、なおも彼女のほっそりとした顎に手をかけて甘く囁き──



がさり、と近くの茂みが音を立てる。



弾かれたように、男女は刀の柄に手をかけて振り返った。