「十九人」

娘の問いに、黒服の若者はこの場にいる山賊たちの数を正確に示し、

「何秒でいける?」

抜き放った大刀を構えながら、彼女に聞き返した。


「百人なら十秒ってところだ。
だから──二秒だよ、『一騎当千』」

若者にそんな言葉を返す女の表情に、山賊たちは愕然とする。

たった今まで上気した頬で喘いでいた顔からは
あどけなさなど欠片も残さず消え失せ、
冷たく凍りついた刃物にも似た、剣呑な冷笑が浮いている。


「お前な、それだと俺が殺る数を引いてないだろう、『電光石火』。
──つまり一秒か、了解だ」

黒コートの若者がにやりと笑って、


「な──何を言ってるんだ、こいつら?」

「『一騎当千』に『電光石火』……?」


互いをそう呼び合った男女を見比べて、山賊の一人が青ざめた。


「まさか、こいつら、巷で噂の──!?」

「ほほう、山賊風情にまで名が知れ渡ってるのか。嬉しいね」


そう言う黒コートの男の、銀髪の下の紅の瞳に──


ポウ、と黄金の炎が灯る。


同様に、

男たちが押さえつけた女の目でも、黒い瞳が妖しい紫色の輝きを放った。



「目が光った──やべエ! こいつら『剣術使い』だ!」



山賊たちが気づいて戦慄し、女は魅惑的な白い足を晒したまま冷笑した。

「この先も楽しませてやりたかったが──悪いな。

私が最後まで体を許すのは、私が認めた男だけだ」