電光石火×一騎当千

「タイホウさんは妖怪が怖くないんですかあ?」

そんなタイホウの戦いぶりを見て、戦場ではひいひい言いながら逃げ回ってばかりのジンヤが感心したように聞いてきて、

「敵を怖がっててどうするんだてめえは」

タイホウはなんだかんだで弟分のように面倒を見ていたこの若者を叱咤した。

「でもタイホウさんだって、この戦に参加したってことは、魔王が降臨したら大変だと思って──つまり妖怪を驚異に感じてたからってことでしょう?」

拗ねたようにそんな屁理屈を口にしたジンヤに、タイホウは鼻を鳴らした。

「俺は戦で敵を斬りたかったから参戦しただけだよ。相手が人間の国だろうが、魔物の首領だろうが、どうだっていい。
敵を斬って、俺の強さをそこらの連中に知らしめてやりたいだけさ」

そう言いつつも、タイホウは今やその自分の目的が微妙にすり替わってしまっていることを感じていた。

そこらの連中ではなく──タイホウが自分の強さを認めさせたい相手は、いつの間にかカミナルになっていたのだった。


初対面で否定されたからだ。
だから認めさせてやりたいのだ。


己でもよくわからない感情に苛つきながら、そのように理由づけて──


そして戦は終局を迎え、

攻め入った敵の居城に、魔王の姿はなく、
巨大なハマグリが一つ、城の堀の中から浮かび上がってきた。