電光石火×一騎当千

衆目の前でカミナルに手玉にとられてから、タイホウは彼女を目の敵にした。

戦場では常に彼女よりも多くの妖怪を討ち取ることを目指し、ほとんど戦いでは役に立たずにへっぴり腰でタイホウにくっついて回るジンヤには、カミナルについて探らせた。

「『電光石火』のカミナルさんと言えば、どうもここ最近数々の戦場で武功を立てて一気に名を揚げた剣術使いで、侍座でも注目されているようですよ」

いつもヘラヘラと笑いを浮かべている若者は、いつも笑っているせいで糸のように見える目をますます細め、頬に朱を上らせて満面の笑顔でカミナルについて語った。

「いやあ、あんなに美人で、しかも強いなんて……いいですよねえ」

完全にホの字の言葉だった。

タイホウの気も知らず、ジンヤはその後も戦の間中カミナルを誉めちぎり──

それは何もジンヤに限ったことではなく、カミナルの美しさと強さは陣営の男たちをことごとく虜にしていて、どいつもこいつも口を開けば美貌の女剣客の話。

タイホウはイライラしっぱなしだった。

初対面でカミナルに、神通力まで駆使して手も足も出なかった恥辱もあるが、その後何度か陣中で顔を合わせてタイホウが話しかけても、カミナルが徹底して素っ気ない態度であったことも彼には屈辱だった。

タイホウは自分の容姿には自信を持っていた。

これまでこの甘いマスクで微笑みかけて靡かない女はいなかったし、当然自分は女にモテると信じて疑わなかった。

ところが、である。

そんなタイホウに対しても、カミナルは歯牙にもかけていない様子で、美しい白い頬を染めるどころか顔色一つ変えない。


どうしてこんなにムキになってこの女を意識するのか、自分でもわからぬまま、タイホウは彼女に負けじと妖怪の軍勢を蹴散らし続けた。