電光石火×一騎当千

「そう言えば、結局その戦ってどうなったの? 魔王を討ちとって終わり?」

「もしも俺たちが負けてたら今頃ビンゴ一帯は魔境と化してるだろうし、そもそも俺やカミナルが生きてここにいるワケがないだろ」

「あ、そりゃそっか」

コハルは笑った。

「つまりタイホウさんたち、人間の軍勢が勝ったのよね?」

「いいや」

キョトン、とするコハルにタイホウはやや複雑な表情を向けた。

「消えたのさ」

「え?」

「魔王は消えた。
あの大戦の最後の最後の終局で──魔王神野悪五郎は忽然と姿を消した」


そういうことになっている。
表向きは。


あの戦の真相を知るのはおそらく、この世で自分と相棒の二人だけだろう。


「なあんだ。じゃあ、カミナルさんやタイホウさんも直接魔王を見たワケじゃないんだ」

タイホウは枕元の大太刀にちらりと視線を送る。

「魔王になら──会ってるぜ」

「えっ」

コハルの目が輝いた。

「凄いすごいっ! 神野悪五郎ってどんな奴だったの?」


あの人智を超えた化け物の笑みを思い出し、タイホウは銀の眉を寄せた。


「そうだな……気まぐれで、恐ろしい奴だったよ」


話を聞きたがるコハルにもそれ以上は何も語らず、


お互い恋心を抱く余地──か。


タイホウは先程のコハルの言葉を密やかに胸の内で繰り返す。

まあ……終始、永久凍土の態度で接してきたカミナルのほうはともかく、タイホウ自身には、実は少女の言うその余地とやらがあったということなのかもしれなかった。

タイホウは目を閉じてあの大戦最後の出来事に思いを馳せた。