少女の震える吐息とせつない喘ぎ声が、重ねた肉体の下から漏れている。

「随分と慣れてんだな」

旅籠の二階にある宿の一室で、火照った瑞々しい肌に舌を這わせながら──

タイホウは少々訝っていた。

盗賊の慰みモノにされてたんなら当然か?

始めはそうも思ったのだが……。

タイホウの愛撫に対して
少女は羞恥に頬を染め、潤んだ瞳で唇を噛み耐える素振りを見せている。

純真無垢なるものを犯してゆく感覚。
男の支配欲を満たし、堪らない興奮を与える表情だ。

だが。
これは、


演技──している。


そう悟って、タイホウは不審を覚えた。


「やだな……そんなこと……」

タイホウに抱かれて激しい息に悶えつつ、コハルは困ったような顔をした。

ウブな表情とは裏腹に、少女の柔肌はタイホウに吸いついてくるようで──そこには行為におけるぎこちなさが微塵も存在していなかった。

「こっちも慣れてるからわかるんだよ」

タイホウはコハルから身を離した。

「え?」

「慣れていないフリか、本当にそうかくらいはな」


少女を映すタイホウの美しい赤い瞳を、しばしの間まじまじと見つめ返して、

それから

コハルはふふっと笑った。


タイホウは驚く。
天真爛漫はどこへ行ったのかという、小悪魔めいた艶やかなる魔性の微笑みであった。

「なあんだ、バレてるならお芝居する必要なかったのに」

為されるがままだった先刻までとは打って変わり、少女は赤いヒルのような舌でぺろりと唇を舐めて体を絡みつかせ、自らが上になってタイホウを見下ろした。

「おいおい」と、豹変したその態度に彼は苦笑した。


「慣れてる女の子は嫌い?」


コハルが顔を寄せて囁き、少女の髪の毛がタイホウの胸をくすぐる。

タイホウはニヤリと、整った口元を歪ませた。


「いいや。それならそれで大歓迎だね」


結局、この男の思考はそこに行き着く。

要は愉しめるならば、相手が純真な天使だろうが妖艶な魔女だろうがどうだって良いのだった。