団☆乱ラン






「須具利様、お待ち致しておりました。」







ホテルに入るとすぐ、黒いスーツをビシッと着た男性が慌てて駆け寄り声をかけてきた。



…………。



左胸のネームプレートには“支配人”の文字。



「「ゲゲッ!?」」


─か、顔パス?!



支配人さんは、額の汗をハンカチで拭いながら、母さんと話しをしている。



「…にはいつもお世話になっております。……はいつまでも相変わらず、お美しいですね。……はごきげんいかがですか?……当ホテルをご利用いただき、光栄でございます。そちらの方が、隆様でございますね。……そちらの方は?」



小首を傾げてあたしを見る支配人さん。



「この子は、末っ子の檸檬。」



「さようでございましたか。……失礼を致しました。檸檬様。」


支配人さんはあたしに申し訳なさそうにニッコリ微笑んだ。



「は、初めまして。須具利檸檬です。」



「初めまして……お可愛らしい方ですね。本当に“毬(マリ)”様の小さい頃に良く似ていらっしゃいます。」



(“毬”とは、母さんの名前だ、ちなみに“聖母マリア”から二文字貰ったらしい……親の気持ち子知らず……成長した母さんは聖母ならぬ─“鬼子母神”だ。)