「ほら、ほら、二人とも早くっ!!」 母さんの声がする。 ほらほらって、手招きしている。 「ほら、早くっ!!」 いつもと違う3オクターブは高い声── すごく、キレイな声であたしたちに呼び掛ける。 「ほら、檸檬!隆くん!」 リムジンのドアから、覗くあれは……誰? ─イワシタシマ? 「「…………。」」 「おんどりゃぁ!!はよせんかいっッ!!」 「「ひぃぃぃぃぃぃッ!!」」 ……ヤッパリ鬼だった。 あたしたちは慌ててリムジンに乗り込んだ。