隆兄の目が潤んできた。
─ヤバい………
言い方間違えたかも… 知れない………。
あたしは体をスッと退(ヒ)いたんだけど─
遅かった。
「れ、檸檬んんんんーーーーーーーッ!!」
ぐわっしっッ!!!!
ギュウウウウウウウッ!!
はぁ……又か。
ホントにあたしはなんて慣れてるんだろう。
突然起こる兄たちの行き過ぎたスキンシップにちっとも驚かない。
きっとあたしの心臓には“毛”が生えてるんだ……
あー…イヤだ!!
16歳で、毛 の生えた心臓なんて──
ピチピチなのに
まだ若葉なのに
大人の階段だって見たことすらないままで─
心臓に“毛”の生えた─
あたしは頭をブンブンと振った。
あー!イヤだイヤだ!!
あたしのピチピチで若葉で、階段も知らない心臓よ…帰ってきて!!
あたしの悲痛な心の叫びだった。
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