「えっ!金堂さんのご実家はお寺さんなんですか?」
父さんが少し身を乗り出して聞いた。
「はい。小さいんですけど、ちゃんと檀家(ダンカ)も有るんですよ。」
「…それって、いつかご実家を継がれる………」
父さんが真面目な顔で尋ねると
「いえ、もう兄が継いでいますから─それに…」
「それに?」
「それに…私、女ですので。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「…………はい?」
シンとした中、父さんが言った。
「あの…えっと…………ワンモアプリーズ?」
…………。
最近、英会話教室に通い始めたばかりの父は覚え立ての英語で尋ねる。
……かなり、動揺しているなぁ。…─ワンモアプリーズ…って…きっといつも言ってるんだ。
でも、マコトさんは全く気にせず
「はい、女ですと言いました。」
そう、キッパリさっぱりしっかり言ってのけた。


