あたしは、呆然と近づく唇を凝視した。
思考は止まっていた。
近づく唇があたしを誘っている気がした。
だって、松宮先生はスゴく綺麗で……甘い声で……優しい笑顔で……
さっきまで慌てていた自分が馬鹿馬鹿しいくらい
あたしは、その一言に堕ちていた。
“僕の、美少女、檸檬”あたしを狂わせる呪文。
─もういいや。
さっきとは違う意味の覚悟を決めたとき──
バンッッ!!
「檸檬ちゃんッ!!」
「二ノ宮くん……。」
ああ、やっぱり王子様だ。
このタイミング。
勢いよく開けたドアの前に立っていたのは
“王子様二ノ宮くん”で。
あたしは、自分が今あられもない姿でいることも忘れて、目に映る二ノ宮くんをうっとりと見つめていた。


