「やっと二人きりになれたね?」
ドアが閉まったとたん、松宮先生があたしを目を細めて見てきた。
「あ、あ、あの─それ以上よらないでくださいっ!近寄ったら……」
「寄ったら?なに?」
「叫びますっ!」
松宮先生は、はあっと息を吐くと
「カイラに又、邪魔されたくないから、仕方ないな。」
肩をすくめて、はぁと又息を吐いた。
「…………。」
あたしはすこし、後悔し始めていた。
─やっぱり、二ノ宮くん…いてもよかったかも…。
自分のちっぽけな羞恥心のおかげで自ら、虎の穴に入っていった、うさぎにでもなった気分だ。
だけど
“虎穴に入らずんば虎児を得ず”って言うじゃない?
何を考えているのか全く分からない松宮先生だけど……。
あたしは覚悟を決めた。
「松宮先生。二人っきりにならないと、出来ない話って何ですか?」
ホントに肝が据わると、あたしってスゴいと思う。
すらすらって、そんな風に言葉が出てくるんだから、自分でもびっくりする。
「ああ、そうだね。」
ニヤリと笑う松宮先生。
あたしは、ブルッと身震いした。


