~実見~

次の日。
「じゃあ39ページを・・・
雪下さん!読んで」
「はいっ」
先生に指名されて、慌てて教科書を持つあたし。
「美月は、大きく息を吸って、・・・」
何この漢字?
“凋んでいた”ってなんて読むの?
わかんない・・・
どうしよう。
「実見、この漢字読めないのぉ~?」
「!」
日芽花が口出ししてきた。
「早くしてよ!みんな待ってるんだから!」
月子も、あたしにきつく言う。
「実ー見ー。
読めないなら読めないって、素直に言えばぁ?」
莉桜も続いた。
そんな・・・読めないなんて恥ずかしいよ。
まあさちゃんも見てるっていうのに・・・
「・・・・・」
「実見!早くしなさいよ!!」
日芽花がキレかけてる。
でもあたしは―――――
「こーら。麻倉さんたち、静かにして!」
先生が注意しても、日芽花たちはあたしをじろじろと見て。
もう無理。
give upだよ・・・。
「ごめんなさ・・・
読め・・・ませ・・・ん・・・」
「ぇ、雪下さん、本当に読めないの・・・?
これは、“しぼんでいた”って読むのよ」
先生にダメ出しされて。
日芽花たちに笑われて。
みんなにも笑われて・・・。

休み時間になったら、トイレに駆け込んだ。
個室に入って、1人で泣いた。
「うっ・・・ぅぅ・・・」
どうして・・・
こんな目に合うのがあたしなの?
日芽花は、どうしてあたしをいじめるの?
「実見ちゃんー!どこ!?」
「! ま・・・」
まあさちゃん!!
あたし、ここ。ここにいる!
でも・・・こんな泣きまくった赤い目で、
まあさちゃんと話す訳にはいかない。
あたしは、居留守をつかった。