「全然気がつかなかった・・・・。あたしにとって、一番嫌いだと思ってたものが、一番必要なものだったんだ」
「嫌いなもの?」
「うん・・・・あたしもね、家っていうことにも、家族っていうことにもずっと反抗してたんだ。だけど・・・あたしのは”反抗”なんじゃなかったって、わかったの」
自分の言葉がひとつひとつ耳から体にしみこんでいく。
「それは逃げてただけなんだって・・・・どれだけそれに守られてたのか気づいてなかったんだ」
「・・・・・」
「恭二、ごめんね?昨日あんなこと・・・えらそうなこと言ってたけど、あたしは・・・・決められた道、じゃなくて今まであたしを守ってくれた道を見てみたい、って思うんだ」
ぎゅっ、と唇をかんでから、もう一度つぶやいた。
あたし自身に向かって。
「守ってくれてた人達に・・・人に・・・・会いたいんだ」