いやいやいや。
落ち着けあたし。
こんなに嬉しいことがあるだろうか!
あの女たらしで数々の事件を引き起こし、
その上甘い口車にのせて当然のように人気者の座につき。
しかし性格最悪の腹黒人間でもあり、
本当に将来刺されるんじゃないか
とそろそろ心配だった幼なじみに!
好きな人ができた!!
そんなことって、最高ではなくて?
嬉しい気持ちになれないのは、うん、そうあれよ、あれ。
「巣立つヒナ鳥をみる母鳥の心境…」
それだ。
「は?」
なんか隣で篠沢君の呆気にとられたような声が聞こえなくもないけど。
気のせいかなー、と片付けた。
「なーんか俺、すごく失礼なこと言われてね?」
あぁ、ヒナ鳥の声が聞こえる。
一気に現実に戻され、ぐるっと後ろを振り向いた。
「それくらい言って当然………」
勢い良く、覇気をもって振り向いたつもりが、言葉を途中で止めてしまう。


