世界と僕は戦っている きっと世界が勝つだろう

 今思えばあの夏の日、俺の感じた彼女への憧れと称賛はただの先にリタイアする者への甘ったれた嫉妬だったのかもしれない。


「…長村の言う通り、だね」


 頬に涙の跡を残したまま森川が言う。


「これからあの子の分まで…なんて綺麗事言う気は無いけど、生きていくしかないから」

「嫌なことばっかでもたまには良いことだってあるだろ?…まぁそう思ってないとやってられねーってのが本音だけどさ」


 その言葉に隣にいた森川がはっと顔を上げて俺を見上げた。

 潤んだままの目元に欲情する隙さえ与えてくれない、大人びた顔が寂しげに笑う。


「きっと…それがその考え方が『世界』側への一歩なんだろうね」


 思わず言った言葉をそんな風に指摘され俺は心のどこかにストンと落ち着いたものを感じた。


 きっと、これが世界――、つまるところ『大人になる』という事。



 見上げた空は、相変わらず愛想のないの青さ。

 青臭さが少しだけ削げた俺に似た青さだった。