愛の手


――…


うっすらと光りが見える。

正体を確かめたくても、マブタの重さに耐え切れずに閉じたまま。


お風呂あがりの体は冷めてしまったはずなのに、眠気を誘うくらいあったかい。



あたしはそのあったかさが気持ちよくてすりよった。

頬につたわるぬくもりが、いままで体験したことのないくらいに安心感を与えてくれた。



鼻に届いたのは、甘いお香の匂い。


昔、近所のお兄ちゃんがよくその匂いをさせていたな。

あたしの、初恋のヒト。



優しくてあたたかい手が、あたしのオデコに触れた。





――…愛理。





遠くで呼ばれた甘い声に、あたしは返事をすることなく再び眠りについた。