愛の手


波の音が遠くに感じる。


ザァー、ザァー、ってなにか話しかけてるみたいに音が聴こえる。


「……り、愛理っ!!」

呼び声に、あたしは大きく目を見開いた。


あたし……?


「バカか、お前。大丈夫か?」

切羽つまった総司さんの声に、あたしはあたりを見渡した。

浜で横になった状態で、総司さんに抱きかかえられて、びしょ濡れで……



「そ、そそ、総司さん!? 濡れちゃってますよ!?」


ヤバイ!!

総司さんの高級そうな服が台無し!!ってくらいにびっしょり濡れてる。



「かまわねぇよ。お前は大丈夫か?」


そうだ、波に呑まれたんだっけ……

波に呑まれる直前に聴こえた総司さんの声。

あたしを助けてくれた、総司さん。



戸惑いながら、こくんとうなずいた。