愛の手


あたしは教室の前で立ち止まった。

大きく息を吸って、吐いて――…


――…ガラガラッ

扉を開くと、いままでガヤガヤしていたはずの教室がシンッと静まり返った。

それが心地悪くて、さっさと席まで歩く。


イジメられてるわけではない。


もともとあまり社交的ではない性格と、バイト漬けの毎日だったせいで、あたしはクラスから孤立している。

さらにヤクザな方々が送迎してくれるようになったもんだから、敬遠されるようになってきた。



べつにイイんだけどね。

あたしは誰とかかわることなく、誰に迷惑をかけることもなく、借金を返済しなければ。


カバンから教科書を抜きとると、すぐに携帯をとり出した。

こういうヒマな時間は、前までどう過ごしてたんだっけ、なんて頭の隅で考えた。


携帯をイジッてるフリをしながら、あたしは始業チャイムの音を待ち続けた。